日時
2015年8月24日(月)~29日(土)
11:00~16:30
もしもし、もしもーし。
もしもしは、電話で話し始めの時、個人から他者へ向けて語りかける第一声だ。それは、性差も身分も年齢の制限もなく使える言葉だ。もちろん何のライセンスも必要無しに発信できる言葉だ。その限定性の無さはアートを思い出す。アートを発信するということは性差も身分も年齢の制限もなく出来るのだ。携帯電話のように密室からでも雑踏からでもカフェからでも、個人から他者に向けて発信できる言葉だ。ただ、ときおり、場所を考えないと電波が届きにくい場合もあるし、内容と受け手により、思わぬひんしゅくを買う場合もある。また、いくら音声がクリアーに伝わったとしても相手の知らない言語であれば何も届きはしない。発信する人が思うように明快に相手へ伝えたいことを伝えるには色々な条件が必要そうである。よりいい場所で、より多くの人が受け取れる場を獲得するにはそれなりの手順と多くの努力と蓄積と閃きが必要だ。
さて、この展覧会は先端芸術表現科の学生の展覧会なので、先端芸術表現科の話をしよう。そもそも先端芸術って何なのだ?辞書には載っていない。おそらく、作る作品の素材を常に限定することなく、アイディアごとに最も適した素材を選択すればいいと、されている場なのであろう。付け加えると素材とは物質的なものだけではなく、音や身体や言葉の表現にまで拡張して考えている。
今回の展覧会は各種賞を受賞した4人の学生の展覧会だ。いずれも世間に送り出しても恥ずかしくない力強い仕事をしている。彼らは芸術家としてスタート地点に着いたばかりである。彼らのこれからの長い芸術家人生はどのように発展してゆくのだろう。今後もきっと彼らは作品を通して世界に問いかけを続けてゆくのであろう。
もしもし、もしもーし、と。
東京藝術大学 美術学部 先端芸術表現科 准教授 小沢剛(美術家)